EigenLayer 101: ETH リステーキングがどのようにして Ethereum のセキュリティモデルを再構築するのか

核心ロジックはここにある

EigenLayer は一見シンプルだがゲームチェンジとなることを実現した──すでにステーキングされている ETH をさらにステークできるようにしたのだ。これは単なる Ctrl+C ではなく、賢い経済設計だ。あなたの ETH は Ethereum のコンセンサス維持に使われつつ、同時に他のプロジェクト（オラクル、クロスチェーンブリッジ、データ可用性レイヤー等）にも暗号経済的なセキュリティを提供できる。

言い換えれば、Ethereum 自体の信頼基盤がパッケージ化され、コモディティ化されたセキュリティサービスとなり、改ざん防止が必要なすべてのアプリケーションがそれをレンタルできるようになる。

Restaking の2つの方法

リキッドステーキング・リステーク（シンプル版）

• stETH（(Lido)）、rETH（(Rocket Pool)）などのリキッドトークンを保有
• そのまま EigenLayer コントラクトに投入
• 複数の報酬を待つだけ（Ethereum のバリデータ報酬＋プロジェクトのセキュリティフィー）
• リスク：プロジェクトに問題が起きると、リキッドトークンがスラッシュ（没収）される可能性

ネイティブリステーク（技術派向け）

• バリデータが自分の出金キーをそのまま EigenLayer に向ける
• 深く関与しリターンも高いが、責任も大きい
• 検証しているプロジェクトでトラブルがあれば、元の ETH がスラッシュされる

EigenDA：最初のキラーアプリ

EigenLayer のフラッグシップ AVS（アクティブ検証サービス）。本質的にはデータ可用性レイヤー：

• コスト = Ethereum L1 の 10～100 分の1
• スループット = Ethereum の数倍
• 用途 = Rollup やサイドチェーンにデータコミットメントを提供

2024年4月にメインネットローンチ済み。現在、複数の Rollup で本番トラフィックを試験運用中。

EIGEN トークン：主観的な障害へのブラックテクノロジー

ここからが面白いところ。

Ethereum ステーキングは「客観的な障害」（数学的に検証可能な不正）しか守れない。しかし多くのプロジェクト障害は「主観的」─ 多数決で合意が必要。例えば、チェーンがフォークした時にどちらが正しいか？

EIGEN トークンは、こうした問題解決のためにステークされる：

1. 大多数の EIGEN ステーカーが投票してコンセンサスを形成
2. 誤った投票をすればスラッシュされる
3. この仕組みにより悪意あるフォークを防止

賢い点：二重トークン体制（ETH＋EIGEN）は補完し合いながらも役割分担がある：

• ETH = 共謀防止・分散性維持
• EIGEN = オンチェーンの主観的な衝突を的確に処理

エコシステムの三角形

ステーカー：あなた

• 二重の報酬（ETH 検証料＋プロジェクトセキュリティ料）を得る
• 新たなスラッシュリスクを負う

オペレーター：ノード運営者

• ゼロから検証者ネットワークを構築せずに済む
• コストが大幅に削減

AVS開発者：セキュリティが必要なプロジェクト

• 直接 Ethereum の信頼基盤を利用できる
• 独自に検証者クラスターを立ち上げる必要がない

データ概要

• リキッドステーキングデリバティブの時価総額：$28B
• EigenDA：複数の Rollup（Arbitrum、Optimism などでテスト中）をすでにサポート
• リスク：大規模なスラッシュイベントが発生した場合、ETH が急速に消失する

なぜこれは重要か

1. セキュリティのモジュール化：Ethereum の信頼を分解し、クラウドサービスのようにオンデマンドで利用できる
2. 資本効率の向上：同じ ETH でリターンが倍増
3. イノベーションを加速：新プロジェクトはゼロから信頼クラスターを構築せず、Ethereum をそのまま利用できる

だがリスクも無視できない

• スラッシュリスク：参加プロジェクトが増えるほど、没収されるリスクも上がる
• 集中リスク：少数の大規模ステーカーが EIGEN を支配すると投票権が集中しすぎる
• 複雑性：この仕組み自体が非常に複雑で、バグリスクは今後の時間で検証される必要がある

次のステップは

2024年の重要ターニングポイント（EigenDA メインネット稼働、複数 Rollup の接続）はすでに通過。今後は本格的なプロダクショントラフィックの爆発が待たれる──十分な数の Rollup が本当に EigenDA にデータを保存しはじめてこそ、この仕組みが本格稼働する。

EigenLayer は本質的に古くからの課題、「Ethereum のセキュリティはなぜ他チェーンが借りられないのか？」への解答を目指している。その答えが、リステーキングによってセキュリティをコモディティ化すること。今後このモデルが確立すれば、新たなブロックチェーン基盤革命が巻き起こる可能性がある。